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2020/04/01掲載
合成の誤謬(ゴビュウ)
新型コロナウィルスの蔓延が社会に大きな影響を与えています。大きなイベントは軒並み中止または縮小を余儀なくされ、とうとう政府は小中高校に対して休学要請までする始末。多くの場面で自粛ムードが漂い、マクロ経済的にも損失は避けられません。身近な場面では、花粉症の季節だというのに一向に入手しにくいマスク、さらにはデマ情報からトイレットペーパーなどの紙類が店頭から消える、なんてこともありました。ここで思い出したのが、経済学用語にある「合成の誤謬(ゴビュウ)」という言葉。

「合成の誤謬」とは、ミクロ(個人)の視点では合理的な行動であっても、マクロ(集団もしくは全体)の視点では必ずしも好ましくない結果が生じてしまうことです。よく例に出されるのは貯蓄の話。個人が貯蓄や節約に励むとその人の資産が増えるからミクロの視点では合理的な行動と言えます。しかし、国民全員が貯蓄や節約に走ると、国全体の消費が減退し、企業の業績が悪化し、国にとっての税収入が減ってしまう。つまり、個々人にとっての合理的な行動が、皆が同じ行動をとることで社会的な状況をむしろ悪化させてしまうわけです。

件のトイレットペーパーの買い占めも話は同じ。個人にとって困らないようにトイレットペーパーを買いだめすることは個人にとっては合理的ですが、皆が同じ行動をすると、あっという間に棚から紙が消え、本当に必要な人が買えなくなるという不幸な結果になります。デマ情報に振り回されることがおかしいという意見ももっともですが、しかし人間は自分がどう思うかではなく他人がどう思うかに基づいて判断(行動)するものです。

だから…デマ情報には振り回されるな!自分勝手なことは止めるべきだ!全体のことも考えて行動すべきだ!大震災のときに水も食料も燃料も不足する避難所で、辛抱強く列に並んだ被災者たちを忘れたか!日本人の礼儀正しさと忍耐力を思い出せ!…と叫びたくなるのですが、話はそう簡単ではありません。なぜならば人間は、生物の本能として、個人の利益を全体の利益よりも優先しがちになるからです。もっと一人ひとりが包容力と寛容の精神を持ち、成熟した社会を構築できれば良いのですが、「合成の誤謬」を回避することは実際問題、容易ではないのです。(蹴人)

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