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2019/05/01掲載
伝統芸能の里帰り
3月に放送されたNHKの「ブラタモリ」は、徳島市内で阿波踊り発祥の謎を探る内容だった。その中で、阿波踊りの陽気な音楽は、江戸時代に特産の藍を全国に売り歩いていた藍商人たちが、各地から芸能文化を持ち帰り、徳島独自のアレンジが加えられた中から生まれたものだと紹介されていた。このように、古くは大坂や京都、江戸で生まれた芸能文化が、当時の商流とともに各地に広まり、その土地で今でも伝統芸能として息づいている例は他にもあるようだ。

毎年、東京の神楽坂では「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」という2日間のイベントが行われている。そこでは、神楽坂にゆかりのある伝統芸能が数々披露される。最近人気の講談、浪曲、義太夫節などの語り芸の他、江戸太神楽の曲芸や尺八、箏、胡弓のライブ演奏、さらには神楽坂の芸者さんとのお座敷遊び体験などもできるイベントだ。今年で7回目の開催となるが、毎回その中で富山県南砺市の城端曳山祭の「庵唄」を唄う若連中が招聘されている。三味線、篠笛、太鼓の演奏とともに、神楽坂界隈の裏路地を練り歩きながら響き渡る庵唄は、伝統と情緒を感じさせる。しかし、富山の祭りがなぜ神楽坂にゆかりがあるのか不思議に思える。

実はこの庵唄、江戸から明治時代にかけて神楽坂などのお座敷で盛んに唄われていた流行歌「江戸端唄」をルーツとするというのがそのゆかりの理由だ。江戸時代末期に神楽坂に訪れた城端の絹織物業者が、商いのついでのお座敷遊びで知った唄を地元に持ち帰り、それが唄い継がれていく中で、独特の形の庵唄となる。そして今では城端曳山祭で、豪華絢爛な山車を先導する庵屋台の中にしっかりと遺っている。先述の阿波踊りと同じような例だが、庵唄の場合は、300年後の江戸のまちに戻ってきて人々に耳を傾けさせる。これは伝統芸能の里帰りともいえるだろう。

これまで、神楽坂まち・大江戸めぐり舞台は11月に行われていた。以前、庵唄の若連中のひとりに聞いた話だと、この里帰りイベントのために、夏の終わりごろから念入りに練習をするとのことだった。しかし、今年は5月11日~12日での開催に変更された。そのためゴールデンウィーク中に行われる本番の曳山祭(5月4日~5日)の直後ということもあり、いつも以上に練習と気合い充分で、かつ曳山祭の雰囲気をも味わわせてくれるような唄が聴けるのではないかと期待している。(歩)

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