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コラム詳細

2015/09/01掲載
NORIN-TEN
今年は第二次大戦後70年になる。公益社団法人発明協会では、戦後の経済的活動で、新たな創造によって歴史的社会的な変革をもたらし、国際的に展開しているイノベーションを選定している。第1回発表は昨年6月に行われ、38のイノベーションが選ばれた。

全ては無理なので数例だけ紹介すると、インスタントラーメン、マンガ・アニメ、新幹線、トヨタ生産方式、家庭用ゲーム機等が並ぶ。どれも日本人なら誰もが知っているものだし、日本の産業のみならず世界的にも影響を与えているイノベーションと言える。第一次産業からコシヒカリ、りんご「ふじ」も選ばれている。この2つも農業の発展に寄与しているから選ばれて当然だと思うのだが、せっかく第一次産業から選ぶのなら、育種家の稲塚権次郎氏(1897-1988年)が開発した「小麦農林10号」を選んでもらいたかった。

小麦農林10号は1935年に育成された。背丈が低いため倒伏しにくく、多収穫になる性質を持っていた。戦後GHQによる遺伝資源収集の中で注目されて「NORIN-TEN」として米国に渡り、O.A.フォーゲル博士により品種改良された。そして「ゲインズ」種が生まれ米国の小麦生産量を驚異的に増やした。それだけに留まらない。NORIN-TENはノーマン・ボーローグ博士によって更に改良されて、メキシコの小麦収穫量を3倍にした。そしてそのメキシコ小麦は大凶作で危機に陥っていたインド、パキスタン等へ送られて、当地のみならず世界中の人々を食糧危機の脅威から救う「緑の革命」につながっていく。全てNORIN-TENの遺伝子を持った子孫たちだ。ボーローグ博士はその功績が認められてノーベル平和賞(1970年)を受賞している。受賞後博士は「あなたの『NORIN-TEN』がなければ私の研究は実現しなかっただろう」と稲塚氏に謝意を伝えた、とのことだ。

稲塚氏が生まれ育ち、そして研究を終えて晩年を過ごしたのは、現在の富山県南砺市だ。ということで、小欄は前回(6月号)に引き続き富山県紹介を意図している。散居村の美しい景色を眺めながら偉大な研究者を偲んでみるのもいいかもしれない。(歩)

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