「寝てない自慢」はもう古い 先般、高市首相がXで「総理就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化」と投稿し物議を醸しました。首相就任直後に「働いて×5」発言など多忙ぶりをアピールしてきた首相ですが、今回の投稿は批判の声が目立ちました。首相自身は政治的な緊張感を示すつもりだったのかもしれませんが、睡眠不足を「努力の証」として語ることは、もはや美談でもなんでもなく、国民の心を動かさないばかりか、時代遅れの価値観を露呈するだけとなってしまいました。
昭和から平成初期にかけては、「寝てないんだよ」「昨日も徹夜でさ」といった「寝てない自慢」が確かに存在していました。長時間労働こそが忠誠心の証であり、睡眠を削ってひたすら働く者が“なぜか”評価されるという価値観がありました。「企業戦士」という言葉もありました。三共の栄養ドリンク「リゲイン」のキャッチコピーは、そのままズバリ「24時間戦えますか!」でしたね。ご記憶の方も多いと思います。
しかし、時代は変わりました。医学的にも、睡眠不足が判断力や集中力を著しく低下させるエビデンスが揃っています。慢性的な睡眠不足は判断力、認知機能の低下だけでなく、心疾患、糖尿病、免疫力低下などのリスクを高めることも、多くの研究で示されています。米国の国立睡眠財団は、多くのエビデンスをもとに、18~64歳の成人に「7~9時間」の睡眠を推奨しています。実際のところ、ほとんどの人がそんなに寝ていないのではないかと思いますが、寝不足状態が仕事のパフォーマンスに悪影響を与えることは疑いようがありません。
「寝てない自慢」をするリーダーには不安しか覚えません。リーダーの役割は、「すべてを自分で抱え込むこと」ではなく(そんなことをすれば、自分がボトルネックになる)、「組織にとって最適な意思決定をする」ために、組織の方向性を決め、関係者の意見を傾聴し、適切な権限移譲をし、組織全体で成果を出す仕組みを整えることです。とても、寝不足の疲弊しきった頭で勤まる仕事ではありません(ましてや、国のリーダーであればなおさら)。十分な睡眠を確保し、いつもフレッシュな頭で思考できるようにすることも、今の時代、ひとつのビジネススキルと言えるでしょう。(蹴人)
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