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コラム詳細

2026/09/01掲載
正統的周辺参加
GMOインターネットグループが「在宅勤務を完全廃止にする」というニュースは、多くの人に強いインパクトを与えました。コロナ禍以降、リモートワークは「働き方の選択肢」として定着していますが、企業によっては再び出社を重視する動きが出てきています。GMOの熊谷代表は、「AI(人工知能)時代だからこそ、人と人が話し合ってアイデアを生み、スピードをもって実行に移すことが求められている」と述べています。

当然のことながら、出社とリモートワークにはそれぞれメリットとデメリットがあります。出社は、偶発的なコミュニケーションや、職場の空気感を通じた暗黙知の共有がしやすい。一方で、通勤負担や集中しづらい環境などの課題もあります。リモートワークは、時間の柔軟性や生産性向上の可能性がある反面、情報の非対称性が生まれやすく、組織への帰属意識が弱まりやすい。どちらが優れているという単純な話ではなく、働く目的や職種、置かれた環境や組織文化によって最適なバランスは変わる、としか言いようがないです。

この議論を考えるうえで、「正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation)」という概念は示唆に富んでいます。これは、学習は中心的な活動にいきなり飛び込むのではなく、周辺的な参加から始まり、徐々に共同体の一員として成長していくという理論です。新人が先輩の仕事を横で見たり、上司の取引先との会話を何気なく聞いたり、雑談の中で価値観を吸収したりするプロセスこそが、学びの本質だという考え方です。

対面環境では、この「周辺参加」が自然に発生します。同僚とのランチ、会議室に向かう途中の会話、誰かが困っている様子に気づいて声をかける瞬間、ホワイトボードのメモを横目で見る経験。こうした予定調和でない経験が、組織の文化や個人の成長を支えているのです。そういった意味では、リモート環境では、正統的周辺参加をどう確保するかが大きな課題なのです。SlackやTeamsでの雑談チャンネル、オープンな作業配信、ペアワークの習慣化など、意図的に「周辺」を設計する必要があります。リモートでは偶発性が失われるため、偶発性を“仕組みとして再現する”発想が求められるのです。出社かリモートかという二項対立を越えた、より豊かな働き方のデザインを模索していきたいものです。(蹴人)

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