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コラム詳細

2021/08/01掲載
奇跡度による選択
新型コロナウイルスに対するワクチン接種が始まっています。ワクチンを接種することは強制ではないものの、ネットなどでは、一部のワクチン反対(拒否)派による荒唐無稽な情報が入り乱れています。例えば、「ワクチンを接種すると、5Gの電波に操られてしまう」「遺伝子情報が操作される」といったものから「接種した腕にスプーンがくっつく」といったものまで、思わず笑ってしまうものもあります。

もともとネットには怪しげな情報が飛び交うものですが、昨年のアメリカ大統領選で展開されたさまざまな「陰謀論」などもそうですが、どれだけ火消しに躍起になっても、次から次へと“ネタ”が投下されてしまい収拾がつきません。人間は、先の見えない漠然とした不安に襲われると、現実離れした主張に囚われてしまう面もあるのかもしれません。いずれにせよ今の時代、ますますネットリテラシーを身に着ける必要性が増しています。

デイヴィッド・ヒューム(David Hume)はイギリス経験論を大成させた哲学者ですが、神を否定することは恐れ多いという時代において、はじめて神を否定するようなことを主張した「懐疑論(すべてを疑う)」でも有名です。ヒューム流に先ほどの現実離れした主張を分析すると、現実離れした主張があった場合、2つの可能性があります。(1)それが真実である、(2)それを主張している多くの人が誤解している、嘘をついている、間違っている、幻覚を見ている、話が間違って伝わった、など。(2)が仮にどんなに起こりそうになくても、(1)の方が起こりそうになければ、ヒュームなら(2)を選択せよと主張するでしょう。

「ファティマの聖母」は、ポルトガルの小さな町ファティマで起きた、カトリック教会が公認している、聖母の出現の1つです。1917年、何万もの群衆を前に太陽が狂ったように回転して見えたり、水源のないところから水が湧き、飲む者に奇跡的な治癒があったりしたと伝えられています。しかし、(1)太陽が実際に空を動き回った、(2)何万もの目撃者が見間違ったか、嘘をついたか、話が間違って報告された。この2つの選択肢がある場合、どう見ても(2)より(1)の方が起きにくいのではないでしょうか。奇跡らしいことが複数ある場合、常に奇跡度の小さい方(より起きやすいほう)を選択すべきなのです。(蹴人)

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