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2011/11/01掲載
英雄への敬意
国際的なヨットレース「アメリカスカップ」をテーマにした『チャレンジ』(ウォリック・コリンズ/著、野本征史/訳)という小説がある。物語の中では、主人公であるアメリカ艇のスキッパー(艇長)は、対戦相手の戦略だけでなく、国家の陰謀にも苛まれながらレースを続けるのだが、決勝の最終レースでソビエト艇の挑戦を退けてフィニッシュする目前で、ヨットをUターンさせ優勝を放棄する。それはヨットマンとしてのプライドと国家の思惑を考えた上での行為だった。

テレビなどで紹介されるアメリカスカップを観ていると、国際親善スポーツイベントのように映るが、実際にはおよそ親善とは言い難いことが起こっている。レース前には相手のヨットの情報を産業スパイのように探り合うのは当然だし、自分たちに有利になるのならルールを平気で変更する。相手を蹴落とすためならばルールすれすれの駆け引きや汚い戦術も展開される。まさに、ヨットレースの場を借りて各国代表者による戦争が繰り広げられているようなものだ。

アメリカスカップに限らず、五輪やW杯、世界大会等様々な国際試合があるが、そこに出場してくるチームや選手は全て国家の威信を背負ってくる。威信をかけた真剣勝負を勝ち抜いて頂点を極めた英雄たちには、最大級の称賛が与えられるべきだと思う。

女子サッカーW杯で優勝した「なでしこジャパン」には、国民栄誉賞が与えられた。当然のことだと思う。しかし、テレビなどで彼女たちが映る時は、英雄というより「人気者」のような扱いが目立った。レポーターは「彼氏はいますか」と、まるで芸能人に問いかけるかのような質問を浴びせ、シーズン中にも関わらずバラエティ番組に引きずり出す。ある番組では、W杯の金メダルに飲み物をこぼしたお笑い芸人が、謝るどころかヘラヘラ笑ってごまかしていた。およそ英雄に対する敬意がまったく感じられない振舞いが残念でならなかった。

余談だが、前述の小説は第2部が『ニューワールド』、第3部『天使の死』と続く。ところが何故か第3部だけ邦訳されていない。第2部ではもう一人の主人公であるソビエト艇のスキッパーが暗殺されてしまうところで終わっている。その後の展開がずっと気になっているのだが、その思いは20年近く叶えられていない。(歩)

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