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コラム詳細

2011/07/01掲載
納期必達
筆者が以前SI企業で、システム開発のプロジェクト・マネジャーをしていた頃の話。上司から担当を指示された某プロジェクト案件は、比較的大規模だが、技術的な難点はないというものであった。納期の制約条件もそれ程厳しいものではなかったし、他の案件と比べると贅沢と思えるぐらいのプロジェクト予算も確保されていた。

予算的に余裕があるおかげでメンバーの獲得も容易く、早々に体制が整い、キックオフミーティングを開いた。その中で筆者は、「これだけの精鋭メンバーが集まったのだから、絶対に失敗は許されない。必ず納期通りにプロジェクトを完了させよう」とメンバーに伝えた。そして、「納期必達」をスローガンに掲げてプロジェクトを開始させた。

しかしこのプロジェクトは、納期を遅延させて失敗した。プロジェクトの終盤になって「間に合いません」という報告が相次いだためである。

精鋭メンバーを集め、スケジュールも厳しくないという中で、なぜ遅延が発生したのか。その要因は、「納期必達」というスローガンが、スケジュールを維持することが絶対的だという意識を、筆者はじめメンバーに植え付けてしまったからではなかったか、ということだった。絶対に納期を守らなければならない状況で作業の遅れが発生すると、「遅れました」という報告が非常にしづらくなるものだ。自分でなんとかしようとして報告を後回しにしてしまったり、時には遅れを表面化させまいと帳尻合わせの行動に走ることもあるだろう。そして、その帳尻合わせが限界となったプロジェクト終盤に、「もうダメです」という報告になったのだと、当時反省したのを記憶している。

先の震災で、福島第一原発が深刻な状況になってしまった。これまで東京電力は「原子力発電は安全」と喧伝してきた。そうした中で、原発に関わる人たちの意識の中に、「安全神話」が生まれてしまったのではないだろうか。だから、同じような場所に設置されている電源が、津波によって一斉に消失してしまうという危険な状況が見過ごされたり、察知したとしても、それを内部から「危険な状態だ」と声を上げたりすることができない組織になっていたのではないだろうか。

組織にとって、絶対的なものや神話化されたものの中にもリスクは潜んでいるということを、今回の震災を機に教訓としたい。(歩)


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