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2026/05/01掲載
「選択と集中」の弱点
「選択と集中」とは、企業が限られた経営資源を、自社の強みが活かせる特定の事業分野に集中的に投下する経営戦略です。「選択と集中」は、多角化によって経営資源が分散し、各事業が中途半端になることを避けるために用いられます。特に、バブル崩壊後の不況期に注目され、多くの企業がこの戦略を採用しました。しかし、優れた戦略に思える「選択と集中」にも弱点はあります。

先般、メディア等で報道された通り、ホンダは2026年3月期に上場来初の赤字に転落します。急進的な脱エンジン戦略が誤算となり、電気自動車(EV)の開発中止で今後、最大2兆5000億円規模の損失を計上する見通しです。「脱エンジン、EVシフト」という、「選択と集中」により構造改革を進めてきましたが、方針転換を余儀なくされました。背景には、米政権によるEV支援策の見直しによる販売不振に加え、米政府が自動車の温暖化ガスの排出規制を撤廃すると発表したことがあります。これによりEVの優位性が一気になくなってしまいました。

現時点の評価としては(あくまでも現時点)、ホンダは「選択と集中」によるEVシフトという賭けに残念ながら負けたと言わざるをえません。歴史にタラレバは禁物ですが、もしウクライナ戦争が起きていなかったら、もし米国でカマラ・ハリスが大統領になっていたら、ホンダの運命も変わっていたのかもしれません。結局のところ「選択と集中」とは、マーケットは成長し続ける、技術問題は早晩克服される、外部環境は大きく変わらないといった(都合の良い)前提に依存しています。つまり、前提が変わってしまったときに、その変化に対する柔軟性やレジリエンスがないというのが「選択と集中」の弱点です。

不確実性の増加する経営環境においては当初の前提そのものが揺らぎやすいために、「選択と集中」戦略は一歩間違うと経営に深刻なダメージを与える大失敗になりかねません。かといって、従来通りの多角化であれもこれもと手を出し、リスク回避的な保守的な意思決定ばかりしていると経営資源が分散し、強みを発揮できません。正解はないのですが、不確実性の高い時代ほど、全賭けは避け、ポートフォリオ・マネジメントの視点をもつことが重要ではないでしょうか。仮に前提の変化があったときに選択肢(option)がある状態が望ましいのは明白ですから。(蹴人)

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