ロマンとソロバン 個人的には驚きのニュースでした。トヨタ自動車が、「4月1日付で近健太執行役員・CFO(最高財務責任者)が社長に昇格し、佐藤恒治社長は副会長となり新設するチーフ・インダストリー・オフィサー(CIO)となる」というサプライズ人事を発表しました。トヨタによれば、「これからトヨタが向き合う経営課題に全力で向き合うためのフォーメーションチェンジだ」とのこと。トヨタの業績は好調なだけに佐藤氏のわずか3年での交代は憶測を呼びそうです。
それはともかく、今回のCFOが社長に就任する人事を見て、ソニーグループもそうでしたが、「そういえば最近CFO出身の社長が増えているな」と感じました。調べてみたら実際その通りで、CFO出身の社長が増えているのは世界的なトレンドのようです。伝統的なCFOの役割は財務計画(具体的には資金の調達、投資、配分に関する計画)の立案、意思決定を行い、企業価値を最大化していくことです。
しかし昨今、CFOに求められる役割が拡大しています。いわる経理、予算、財務、税務などの伝統領域だけでなく、リスクマネジメント、DX推進、人的資本経営、コーポレートガバナンス、IR、M&A、事業ポートフォリオの見直し、経営戦略など広範囲に及びます。背景としては、経営環境の不確実性が高まったこと、またステークホルダーの要請で財務戦略に強いリーダーが求められるようになったことがあります。CFOの役割が「管理」から「経営戦略」の中心に進化しているのです。したがって、今後もCFO出身の社長は増えるのではないでしょうか。
さて、「ロマンとソロバン」という言葉は、一万円札の顔になった渋沢栄一の「論語と算盤」から派生したものです。渋沢曰く、「経営には、道徳と経済の両方が大切である」。道徳をロマンに、経済をソロバンに置き換えると、いろいろな場面に適用しやすいです。ひとつの目標に向かって進むプロジェクトでは、大きなビジョン(ロマン)と、それを実現するための実効性のあるプラン(ソロバン)の両方が必要です。「初めにロマンありき」ですが、「ソロバンなくしてロマンの実現なし」です。経営のみならずプロジェクトにおいても、今後はロマンとソロバンを両立する視点、つまりCFOマインドを持っていたいものです。(蹴人)
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