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コラム詳細

2025/10/01掲載
シャーデンフロイデ
著名人の失言や不祥事が発覚したとき、激しいバッシングが展開されることがあります。なかには不祥事とは全く関係のない過去の事案と結び付けたりして、ネットは炎上し収拾がつかなくなります。自分とは関係のない人物になぜそこまで興奮するのかと思いますが、それは「シャーデンフロイデ(独:Schadenfreude)」が働いているからと説明できます。他人のスキャンダルに興奮する人たちの心にはシャーデンフロイデが潜んでおり、それを正義感というタテマエで発散している、と見なすこともできます。

シャーデンフロイデとは、他人の不幸を喜ぶ心理のことをいいます。日本語にも「人の不幸は蜜の味」という嫌なコトバがありますね。人の不幸を喜ぶなどというと人聞きが悪いし、倫理的にも問題がありそうで、自分の心の中にそんな心理があるとは誰もが認めたくないものですが、シャーデンフロイデは一部の人だけが経験する感情ではなく、むしろある条件下では自然に生じる感情です。具体的には次のような条件でシャーデンフロイデが起きやすいとされています。①他者の不幸の責任が本人自身にあるとみなされるとき(いわゆる自業自得)、②他者の不幸から自分が利益を得ると考えられるとき、③他者が自分より羨ましいと思える何かを持っているとき(いわゆる妬み)。

なぜ人間はこのような感情を抱くかというと、一説によれば、進化の過程でそうした感情が生存に有利に働いたからだそうです。「喜び」というのは、ある行動を促進するために脳に組み込まれたシステムと見なせますから、人類にとってシャーデンフロイデは共同体を守るために必要な感情だった。つまり、自分たちよりも不当に得をしている人、そう見える人を許さない、引きずり下ろしたい、という行動に喜びを感じ、その行動が促進されるというメカニズムです。そうした感情をもった共同体のほうが共同体の維持には有利に働き、その喜びを感じる個体の遺伝子が生き残ったわけです。

シャーデンフロイデをなくすことはできません。シャーデンフロイデを感じたとき、なぜそのような感情を感じたのか客観視することによって、自分自身の理解を深め、冷静な判断ができるようになるかもしれません。シャーデンフロイデは私たちの感情の一部であり、うまく付き合い、ポジティブな方向に活用していきたいものです。(蹴人)

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