非認知能力の重要性 AIの進化によって人間の仕事が奪われるのではないかという議論が盛んです。知識をベースに行う仕事の多くは将来AIに代替されてしまうように見えますが、逆にAIに代替されにくい人間の能力とは何でしょうか。1つの視点は「非認知能力」にあります。IQや学力などテストで測れる知的能力を「認知能力」というのに対し、「非認知能力」とはテストでは測れない個人的形質を指します。
医者を例にとると、膨大な過去データ、症例を読み取り、そこから何らかの答えを(統計的に)導き出すのはAIの得意分野であり、処理能力の面では人間は到底及びません。しかし、患者の気持ちを理解し、患者に寄り添い、きめ細かいサポートをすることなどは、まだまだ人間にadvantageがあります。一般にビジネスパーソンとして成功したいならば、学力を身に付け、いわゆるよい大学に行くことが近道だと言われていますが、これからは学力の差はAIの活用によって埋まりやすいため、非認知能力の差がより重要になってくると思われます。
ところで、学力と人生の成功を考えるにあたり、2000年にノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授(James Joseph Heckman)らの実証実験が有名です。ヘックマン教授は未就学児の支援プログラムに着目し、認知スキルよりも非認知スキルを向上させることで、成人してからの人生に大きなプラスの影響を与えることを示しました。そして、ここが面白いのですが、幼少期に身に付けた非認知能力は、その後の認知能力を伸ばすことに貢献しますが、その逆、つまり幼少期の認知能力が非認知能力を向上させることは観察されない、ということです。
非認知能力の5つの要素は“Big5(ビッグファイブ)”と呼ばれ、Openness(開放性)、Conscientiousness(誠実性)、Extraversion(外向性)、Agreeableness(協調性)、Neuroticism(神経症的傾向)から構成されています。このBig5は当初、子ども時代でないと身に付けにくいとされていたのですが、近年では「大人になってからも伸ばせる」というエビデンスが出てきました。非認知能力は持って生まれた個人的な形質なので変わらないと考えるのではなく、むしろ変化しうるもの、人生の中で伸ばせるもの、と捉えるべきものです。(蹴人)
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