野中郁次郎氏を偲ぶ 経営学者の野中郁次郎氏が亡くなりました。個人的に大好きな学者だっただけに残念です。野中郁次郎氏といえば、ベストセラーである著書「失敗の本質」(1984年)が有名です。旧日本軍が失敗を重ねた要因を探った、今なお語り継がれる名著であり、ビジネスパーソンにとって必読の書となっています。
著書の中では、現在の組織運営にも役立つ、決して色あせることのない教訓がいくつも指定されています。例えば、戦略の不在(曖昧さ)、過去の成功体験への過剰適応(結果、変化に脆くなる)、現場を理解せず活性化する仕組みがないこと、問題を隠し都合のよいことしか信じない姿勢、「集団の空気」に支配される組織風土、などなど。バブル崩壊後の日本企業の迷走の要因にも当てはまる貴重な教訓ばかりです。
一方で、1980年代、日本経済は絶頂期を迎えました。「Japan as No.1」という本まで上梓され、世界中の経営者が日本企業の成功の秘密を知りたがりました。当時の製品開発は、各工程の専門家が文書で次の工程の集団にバトンを渡すようにリレーしていくことが常識でした。これに対して、ホンダやキヤノンなどの日本企業は、研究から工場まで異なる部門が一体となって開発を進めていることが注目されます。日本企業の強みは、「リレーではなくラグビー」にある、…そこから「スクラム」というチームのスタイルが確立します。このスクラム型の開発プロセスは、その後米シリコンバレーでのソフトウェア開発のモデル(agile)に引き継がれます。「スクラム」の生みの親は日本だったわけですね。
野中郁次郎氏の過去の著作物やインタビューの中で、特に印象深かった言葉は、「人的資本という言葉には違和感がある。人はモノでも金でもない。人間は未来に向かって意味をつくり出す動的存在だ。人間は他者との関係性の中で人になる。」というもの。プロジェクト・チームを組成する場面でも、要員の頭数やスキルレベルの問題に焦点が当たりがちになりますが、人と人との関係性において、個々のメンバーが最大限の力を発揮できる環境なのかを常に問いたいものです。(蹴人)
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