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コラム詳細

2024/02/01掲載
安全の難しさ
羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突・炎上するという事故が起きました。日航機の乗客乗員が奇跡的に脱出できたのに対し、海保機の乗組員5人が亡くなり機長が重傷を負いました。羽田は世界有数の過密ダイヤで運営されている空港であることは周知の事実ですが、それにしてもあのような、専門家ですら「信じがたい」と口をそろえる惨事が起きるとは…。

本格的な原因究明はこれからですが、現時点での焦点の1つとして、管制官が許可していなかったにもかかわらず、海保機がなぜ滑走路に進入したのかがあります。海保機が管制官の使った「ナンバーワン」という言葉を滑走路進入許可と誤認したのではないかと言われています。「ナンバーワン」は離陸順位を表すために使用され、進入許可を指す意味はないとされていますから、なぜ海保機は誤認してしまったのでしょうか。機長の心理に何が働いていたのでしょうか。

もう1つ注目したいのは、機長と副機長の「相互確認」が機能していなかったと見られることです。安全な離着陸のためには管制の指示を、機長と副機長の2人が同時に聞き確認することになっていますが、副機長が機長の認識を修正できなかったとみられます。「相互確認」は過去の事故が契機となって運用されているものです。例えば、1977年にスペインの空港で航空機同士が衝突するという事故が起きました。この時も管制情報の錯綜や機長と機関士の相互確認が不十分だったことが指摘されています。

今回の事故は機体のトラブルや技術的な問題ではなく、人的ミス、いわゆるヒューマンエラーが重なって起きてしまったとの見方が強まりました。ヒューマンエラーをゼロにすることはできません。めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象のことを「ブラックスワン(black swan)」と言いますが、一見ありえないと思われることも起こることを前提にリスクに備える必要があります。航空機のみならず、他の移動手段や社会インフラ全体についても、サービス提供者のきめ細かい意思疎通とセーフティネットのおかげで「安全」を享受できていることを、あらためて思い知りました。(蹴人)

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