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2023/12/01掲載
BATNAで考える契約交渉
交渉用語に“BATNA(バトナ)”があります。BATNAとはBest Alternatives To Negotiated Agreementの頭文字を取ったもので、交渉で合意できなかったときの「最善の選択肢」のことです。交渉では、このBATNAがある方が強い立場になります。例えば、A社とB社が交渉しているとして、A社には他に取引先候補が沢山あり、仮にB社との交渉がまとまらなくても困らない。一方、B社は他によい取引先がなく、何が何でもA社との交渉を成立させないと困る状況だとします。この場合、A社、つまりBATNAがある方が強い立場になることは明らかですね。このようにBATNAには、①精神的な余裕を持てる、②交渉上、有利なポジションを取れる、③いざとなれば取引しない(No Deal)という選択肢を持てるなど、さまざまなメリットがあります。

さて、ユーザー企業(発注者)から相談を受けることの1つとして、「ベンダー(受注者)が提示した契約書に対して修正を求めても、受け入れてもらえない」というものがあります。ユーザー企業が、損害賠償、知的財産権の帰属などで修正を要求しても、ベンダーは譲歩してくれない、というものです。その最大の原因は契約交渉の開始が遅いことにあります。ユーザー企業が候補ベンダーの中から1社を選択し、本格的に作業に着手する段になって契約交渉を始めているケースがありますが、これでは遅すぎます。なぜならば、その時点ではユーザー企業にはBATNAがないつまり、今さらベンダーを変えられない)状況になっており、交渉力を失っているからです。

このような状況を避けるためには、ベンダーを1社に絞り込む前に契約交渉を始めなければなりません。その状態であればBATNAを活かした交渉ができることになります。具体的には、ベンダーに提示するRFP(Request for Proposal)の中に、ユーザー企業の契約書を添付するか、重要度が高い契約条件をあらかじめ記載しておき、その条件に沿った提案をベンダーに求めるのです。当然、ベンダーにとって一部の条件は受け入れにくいものがあるでしょうから交渉になります。しかし、この状況ではユーザー企業にはBATNAがありますから、1社に絞った後に交渉するよりもずっと交渉力があることになります。契約交渉はタイミングが命なのです。(蹴人)

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