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2023/02/01掲載
エスノグラフィー
エスノグラフィー(ethnography)とは、ギリシア語のethnos(民族)、graphein(記述)に語源をもつ言葉で、「民族誌」と訳されています。民族学、文化人類学などで使用される研究手法で、フィールドワークによって行動観察をし、その記録を残すことです。例えば外界から閉ざされた場所で暮らす民族を調査するために、その民族を長期にわたって観察し、彼らの話を聞いて、現地の人の暮らしや社会を書き残します。

さて、このエスノグラフィーですが、文化人類学から社会科学の他の分野にも応用され、調査対象も必ずしも地理的に離れた場所に限定されなくなり、都市、企業、消費行動、教育などを対象とする研究が増えています。特にビジネスの分野では、従来の市場調査やマーケティングでは限界のある消費者のニーズや課題を発掘する方法論として活用されています。

やや古い例ですが、Panasonicのインド向けエアコンCubeの例があります。Panasonicのインド支社の担当者は、約120名の現地社員が各家庭での実際の使用状況をエスノグラフィーの手法で観察しました。そこで、音が静かな室内機と室外機の分かれたセパレート型の需要があること(インドでは音が大きいウィンドウ型エアコンが主流だった)、エアコンは一日中使用されることから調節機能を簡略化することによりコストダウンが図れることなどの知見を見出し、そこからヒット商品につなげました。

従来のアンケートやインタビューなどの伝統的な調査方法には限界があります。消費者は自分のニーズを明確には認識しておらず、尋ねられてもうまく答えられるとは限りません。フォード・モーターを興したヘンリー・フォードの言葉ですが、「(自動車が誕生する前に)顧客に望むものを聞いたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」というものがあります。なるほど、確かに、スマートフォンの誕生前に「スマートフォンが欲しい」と言っていた人はいませんね。消費者(顧客)の潜在的なニーズを知るために、今後はますます、相手に密着したエスノグラフィー的な手法が必要とされてくるでしょう。(蹴人)

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