プロジェクト・マネジメントのPMコンセプツ/コラム詳細

プロジェクト・マネジメントのPMコンセプツ/コラム詳細

PMコンセプツ・トップページ >> コラム詳細

採用情報サイトマッププライバシーポリシーお問い合わせ

コラム詳細

2020/10/01掲載
「灰色の男たち」に支配されるな!
NHK Eテレにて「100分 de 名著」というテレビ番組があります。2020年8月は、「モモ」を取り上げていました。「モモ」は、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)が1973年に発表したファンタジー作品です。私も大昔、読んだ記憶があります。NHK Eテレで取り上げられることを知り、何か無性に懐かしくなり、もう一度文庫本を読んでみました。もちろん、本の詳細は忘れていたのですが、何かしら新しい発見があるのが読書のよいところです。エンデが「モモ」を書いた時代からしばらく経ちますが、そのメッセージは現代にも通じるところがあり、日常の変革を求められるコロナ禍のいま、「豊かさとは何か」を根本から問う名作だと思います。

さて、「モモ」には、人々に時間を節約して仕事を効率的にするように説いてまわる「灰色の男たち」が登場します。「灰色の男たち」は時間貯蓄銀行のメンバーで、人間に倹約させ時間を奪うことを目的としています。そして、ひとたび時間貯蓄銀行のシステムに乗ると、人間の豊かさのようなものが失われ、人々の心はむしろ貧しくなっていくのです。そこにひとりの女の子(モモ)が立ち上がる、という物語なのですが…。

「灰色の男たち」に言わせると、くだらないおしゃべり、食事、ペットの散歩、買い物、星空を眺める時間、あれこれ楽しいことを妄想する時間、すべてが無駄なものなのです。それらを節約した人間は確かに以前より身なりがよくなり、お金を余計に稼ぐようになりましたが、皆、不機嫌な、くたびれた、怒りっぽい顔をするようになります。「効率化」を追求するあまりに、心の余裕がなくなってしまったのです。

現代を生きる私たちの中にも、「効率化」に取りつかれて、ハムスターの回し車のようにあくせく動き回り、心の豊かさを失っている人が大勢います。コロナ禍で非接触型のワークスタイルが求められ、あらゆるものを仮想空間に移行させ効率化する、という話も結構ですが、一方で、このような時代だからこそ、むしろわざわざ会って話す対面型コミュニケーションの価値が高まります。私たちは、「本当に無駄な時間」と「一見無駄に見えるけれども、実は意味のある時間」を区別する選球眼を持たなければなりません。そして、決して「灰色の男たち」に心を支配されてはなりません。(蹴人)

採用情報サイトマッププライバシーポリシーお問い合わせ