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コラム詳細

2020/09/01掲載
すすきみみずくの教え
40年以上前になるが、小欄は高校の文化祭での研究発表のための材料集めで、都電荒川線(現在の愛称は東京さくらトラム)の沿線巡りをしたことがある。その道中、雑司ヶ谷鬼子母神の近くの土産物屋で「すすきみみずく」という郷土玩具を見つけた。すすきみみずくにまつわる民話が残されている。病気の母親を心配した少女が、鬼子母神にお百度参りをする。しかし、苦行に疲れた少女は満願の日に参道で寝込んでしまう。すると夢の中から鬼子母神の化身の蝶が表れてすすきみみずくの作り方を教えてくれる。目覚めた少女は教えてもらったままに作ると飛ぶように売れ、母の病気のための薬が買えるようになった。

願いを成就させるためには、祈るだけではだめで、努力が必要だという教えを、すすきみみずくに添えられていたしおりで知った。その当時は、正直なところ、すすきの穂を丸めるように束ねて頭と胴体を作り、そこに目と耳をちょんちょんと付けただけの地味な玩具だと思った。売っているお店も、ちょっと見ただけでは土産物屋とは分からないような店構えだったように記憶している。

そのすすきみみずくは、10年ほど前に作られなくなってしまった。何も地味で売れなくなったというわけではない。作り手の方が高齢となり、製作をやめてお店も閉めてしまったのがその理由だ。そう聞くと、技術伝承の問題と思われがちだが、そうでもない。作り手の方の所には、「作り方を教えてほしい」と訪ねてくる人は数多くいたらしい。ただ教えるとすぐいなくなってしまい、地方でまがい物のすすきみみずくを売り出すということが繰り返されることに嫌気がさし、廃業を決めたのだ。

しかし、廃業によって民話の教えも語り継がれなくなってしまうことを惜しんだ地元の住民有志が保存会を発足し、数々の困難を乗り越えてすすきみみずくを復活させたという話を最近になって聞き、久しぶりに雑司ヶ谷鬼子母神にお参りをしたくなった。コロナの禍中、Go-Toトラベルに行くだの行かないだの、東京が対象から外されたからどうのと騒がしいが、何も遠くへ行かなくても、身近なところで、今努力をしている人を探して、その努力を称えるために(3密を避けながら)訪れることも、経済活動継続の一環になるのではないだろうか。誰もが簡単にできることだと思う。(歩)

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