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コラム詳細

2019/11/01掲載
正常時バイアス
先日の台風19号は、関東甲信越奥州の各地に大きな被害をもたらした。筆者は連休に合わせて国内旅行を企てていたが、旅先へ向かう列車が運休となったため、旅行全体のキャンセルを余儀なくされ、連休中は自宅待機の状態だった。すると、台風が関東に接近しつつあった10月12日の正午過ぎあたりから、スマートフォンに緊急速報メールが盛んに届くようになった。最初の内は市役所からの「避難準備」のメールだったが、夕方には、近くの河川氾濫の危険を知らせる警戒レベル4のメールとなり、さらに夜になると特別警戒のレベル5へと変わっていった。

近くの川が氾濫するかもしれないと聞き、自治体が公開しているハザードマップを確認しようと考え、市役所のホームページにアクセスを試みた。しかし、警報が届いてからでは時すでに遅かった。多数の人が同じように考えたらしく、まったくつながらなかった。果たして、全員避難の指示がすぐ近くの町内まで出ていたのに、筆者の住む町内は含まれていなかったので、「これまでも大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」と勝手に判断して、ハザードマップを見ることを諦め、避難もしなかった。

この「今まで平穏無事に過ごしてきたのだからこれからも大丈夫」と考えてしまうことを、心理学では「正常時バイアス」と呼ぶ。人は予期せぬ事態に対面したり、これまで経験したりしたこともないような状況を目の当たりにすると、脳が処理しきれなくなる。すると「こんなことはありえない」という先入観から、認知にバイアス(偏り)がかかり、目の前に起こっていることが「正常の範囲」と都合よく解釈するような心の動きが生じてしまう。災害時にこの正常時バイアスに陥ると、逃げ遅れの原因になると言われている。

2011年の東日本大震災での津波が発生した時にも、そして2018年西日本豪雨の際にも、この正常時バイアスという心理が逃げ遅れの原因となり、被害を拡大させたと言われている。最近は過去の経験則では推し量れないような災害が起きることもあるので、バイアスのかかった状態で間違った行動をしてしまうことは避けなければならない。

特別警報は命の危険を知らせるものだ。警報が出されたのなら自分自身や大切な家族の命を守ることを最優先に考えて行動すべきだと思う。幸いにも今回の台風では筆者自身も何事もなかったが、教訓としたい。(歩)

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