小さなリーダーシップ
順調な航海を続けている船長に求められるリーダーシップと沈みゆくタイタニック号の船長に求められるリーダーシップは違います。ベテラン中心のチームに求められるリーダーシップと新人だらけのチームに求められるリーダーシップも違います。このように、リーダーシップという概念は文脈依存性がありますので一律の定義は難しいのですが、少なくとも、「積極的に関与（コミット）する姿勢があること」「受動的ではなく能動的なマインドや姿勢」といった要素は共通しているのではないでしょうか。
研修講師をしていると、さまざまなお客様のさまざまなコースを担当するのですが、このリーダーシップの差を感じることも珍しくありません。典型的なのは受講者から受ける質問の質と量の違いです。時間内にさばききれないほどの質問を受講者から浴びせられることもあれば、講師が指名しないと質問が全く出ないクラスもあります（指名すると質問は出るのがまた不思議）。
また、受講者の座る座席を予め指定せずにフリーアドレスとしている場合、会場の前から（つまり講師に近い席から）埋まるクラスもあれば、会場の後ろから（つまり講師から遠い席から）埋まるクラスもあります。リーダーシップという点では前者のクラスの受講者の方が兼ね備えていると言えるでしょう。
マハトマ・ガンジー、マザー・テレサ、キング牧師、ジョン・F・ケネディ大統領、ニール・アームストロング船長、…。歴史上の偉人は卓越したリーダーシップを備えています。しかし、我々に必要なのは彼らが持つようなカリスマ性ではなく、もっと「小さなリーダーシップ」です。プロジェクト現場では、「お客様と円滑な関係を構築するようコミュニケーションをとる」「もっと生産性が上がる方法がないかを考え提案する」「会議ではホワイトボードの前に立つ」「困っている人に声を掛ける」「困難な時ほど明るく振る舞う」。そんな小さなリーダーシップの積み重ねが、チームの雰囲気を前向きに変え、個人のモチベーションにも好影響を与えるはずです。（蹴人）
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