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コラム詳細

2016/12/01掲載
イノベーションの芽を摘むな
2016年のノーベル賞では、東京工業大学の大隅良典 栄誉教授がオートファジーの仕組みの解明により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。近年の同分野では、2012年の山中伸弥 教授(iPS細胞)、2015年の大村智 教授(線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法)に続いての受賞となり、喜ばしい限りです。

今回は山中教授のiPS細胞の例を取り上げてみます。山中教授のプロジェクトは今でこそ、数十億円、数百億円の大規模プロジェクトになっていますが、順風満帆にプロジェクトが立ち上がったわけではありません。もともと山中教授は奈良先端科学技術大学院大学に在籍していました。ここで彼は普通のテーマでは人や予算がつかないと考え、あえて異端のテーマである「iPS細胞」を選択します。

当時、再生医療の世界では、iPS細胞は成功の可能性が低いと考えられていました。すでに分化している細胞から細胞の年齢を巻き戻すというのは夢のような話だったからです。事実、JST(科学技術振興機構)では、ほとんどの技術者が反対したと言います。しかしJSTは多数決で物事を決めるのではなく、目利きの専門家に強力な権限が与えられており、ただ一人の意思決定でも予算をつけることができました。iPS細胞もごく少数の研究者から「成功の可能性は低いものの、大きく化ける可能性もある」と評価され生き残りました。この結果、ノーベル生理学・医学賞につながるほどの研究が無事にスタートされたのです。

この事実は、特に不確実性の高いイノベーションに関する意思決定において重要な点を示唆しているように思われます。イノベーションは少数意見や異端から生まれることが多く、そこで合議制(多数決)や経済合理性を中心に意思決定すると、その可能性(芽)を摘みかねないということです。

会社の事業領域においても同じことがいえないでしょうか。すなわち、「選択と集中」の名のもとに合議制と経済合理性を中心に企業経営をすると、ハイリスク・ハイリターンのチャレンジ案件を潰してしまい、その企業が先細りになることは避けられません。したがって、一定の割合で、あえて戦略的な非合理を追い求めることも大切なのではないかと思うのです。(蹴人)

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