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コラム詳細

2016/09/01掲載
沈思 in 熊本
リオオリンピックで錦織圭が日本としては96年ぶりとなるテニス競技でのメダルを獲得した。その試合での錦織のとある行動がツイッターで話題になった。第2セットをナダルに奪われセットカウント1-1となった際、錦織がトイレ休憩を要請した。休憩から早々に戻り第2セットの勢いのまま早く始めたいナダルに対し、錦織は一向に休憩から戻ってこない。焦れたナダルは審判に抗議するも認められない。観客の「早く始めろ」というブーイングと「どこか故障でもしたのか」というざわめきが交錯する中、錦織が何事もなかったかのようにコートに現われる。このシーンが巌流島での佐々木小次郎との決闘で、時間に遅れて現れた宮本武蔵の逸話を想起させるというのだが、果たして錦織の意中はどうだったのだろうか。

錦織の活躍が話題になっている頃、筆者は熊本を訪れていた。当地は宮本武蔵が晩年を過ごした地としても広く知られている。個人的な用事を済ませた後、近くに宮本武蔵の墓があるのを思い出し「武蔵塚公園」に立ち寄ることにした。以前から一度は訪ねたいと思っていたので楽しみにしていたのだが、非常に残念な光景を目にすることとなった。公園内の墓所は、墓石が仰向けにひっくり返り、石塔も崩れ落ちていた。周囲は立ち入り禁止の黄色いテープで仕切られ、墓参りするには忍びない状態だった。今年の4月に起きた熊本地震によるものだ。他にも地震の傷跡が至る所に残っていた。

残念な気持ちを抱えながら公園を後にして最寄り駅への道すがら周辺を注視してみると、普通の街並みと変わりないと思っていた風景が一変した。瓦が落ちて青いビニールシートが掛けられた屋根がやたらに目につくようになった。問題なさそうに見えたマンションも1階部分の柱に亀裂が入り、立ち入りできないようになっていた。おそらくもう住むことは困難だろう。復興までにはこれからまだ相当の時間と費用がかかる事が容易にうかがえる。

リオオリンピックでの日本人選手たちの活躍は、熊本だけでなく日本各地で災害からの復興に苦労されている人々に勇気と元気を与えてくれた事に間違いはない。しかしそれは一時的なものでしかないのも事実だと思う。復興への長い道のりは日本全体で継続的に支えて行かなければならないのではないかと、深く考えさせられた旅となった。(歩)

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