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2016/05/01掲載
合意の取り消し
お隣の韓国で過日行われた総選挙では、与党セヌリ党が議席数を減らし過半数を確保することができなかった。その結果、朴槿恵大統領の残された任期は茨の道になるだろうとの報道とともに、勢いづいた野党が昨年末の慰安婦問題の日韓合意の取り消しを朴政権に求めるのではとの情報も伝わってきている。

以前にも、日本と韓国との外交において、合意の取り消しによって日本は痛い目に遭っている。それは2015年7月のユネスコ世界遺産委員会の審議での出来事だ。日本は「明治日本の産業革命遺産」、韓国は「百済の歴史地区」の世界文化遺産登録を目指していた。審議に先立って6月21日に両国の外相会談でお互いに協力することで一致。さらに23日の非公式協議でも合意されていた。

しかし、委員会が始まると審議の進行で日韓が対立し、先に「百済の歴史地区」の登録が認められた。日本は合意内容に沿って履行し登録に賛成したが、その後日本の審議では韓国は「朝鮮半島出身者の強制労働を認めなければ登録に反対」と主張し事前の合意内容を取り消した。取り消しにはこちらも別の合意事項の取り消しで対抗するのが常套手段だが、もう日本側には取り消す交渉カードがない。慌てた日本は陳述の内容を修正することでなんとか登録に至ったが、登録認定後の外務省は「forced to work」という文言の解釈について苦しい説明をしなければならなかった。

外相同士で一度手を握り合った内容を、いとも簡単に撤回するような戦術を使うくらいだから、今回の日韓合意においても取り消しがないとは限らない。もしもの時はこちらも取り消しで相手の出方を探っていきたいところだが、そうなると前回の日韓合意がなし崩しになってしまう。であれば、こちら側が先に合意した事項を履行してしまい、取り消しをさせない状況を作り出すことで、相手にプレッシャーをかけるというのもひとつだ。他国からも注目されている合意内容だけに安易に不履行を決め込む訳にはいかなくなるだろう。

政府間の合意を簡単になかったことにしてしまうようでは、国際社会での信用は得られないと思うのだが如何だろうか。(歩)

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