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コラム詳細

2014/09/01掲載
鶏口となるか
電気蚊取器が普及してしまったせいか、渦巻き型の蚊取線香を見かけることは少なくなった。以前なら、蚊遣豚(かやりぶた)が静かに煙を吐き出す線香の香りは、夏になれば、そこかしこから漂ってきたものだ。

あの渦巻き型の線香は、大日本除虫菊の創業者上山英一郎氏の考案だ。最初は棒状の線香だったらしい。しかし、線香は折れやすく長さはせいぜい20cmが限界で、これだと燃焼時間は40分程しか持たない。もっと長持ちさせたいのだが、すぐに折れてしまうため容易に長くできずに悩んでいる最中、上山夫人の「渦巻きにしたら」のひと言からあの形が生まれたそうだ。渦巻きにすることで長さは約60cmになり、約6時間燃え続ける「金鳥」蚊取線香の開発に成功した。以来百十余年その形は変わっていない。

変わっていないのは渦巻きだけではない。金鳥のマークも創業当時からそのままだ。上山氏が史記の故事「鶏口となるも牛後となるなかれ(大きな集団の中で尻にいて使われるよりも、小さな集団であっても長となるほうがよいという意味)」から採用したそうだ。そう聞くと、金鳥のシンボルマークには上山氏の起業家としての矜持がこめられているように思えてくる。

先日の報道によると、政府はサラリーマンをやめて起業する人に年間650万円の生活費を最長2年間支給する制度の導入を決めたようだ。起業した当初に収入がほとんどなくなってしまう不安をなくして、大企業などに勤務する優秀な技術者や研究者の起業を後押しするのが目的だそうだ。新しい会社がどれだけ増えたかを示す「開業率」が外国と比べて低いのが政府は気になっているようだ。

しかし、起業にはそれ相応の覚悟が求められるはずだ。新しいビジネスに挑戦するのだから生みの苦しみがあるのは当然。その厳しい環境を乗り越える強い気概がなければ成功を掴み取ることは難しいと思う。それなのに開業率という数字だけを上げるために過保護のような政策を実施しても、本物の鶏口(起業家)を育てることにはならないだろう。

このような制度からは、渦巻き型線香のような斬新なアイデアや継続性のあるビジネス・モデルは、生まれないのではと懸念される。(歩)


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